表題番号:2023R-026 日付:2024/02/13
研究課題目覚め期の染色体を紐解くのは誰か:クロマチン・mRNA動態が連動する細胞の始動機構
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 教授 佐藤 政充
研究成果概要

本研究では、真核細胞分裂酵母やほ乳類の細胞が休眠と活動のスイッチをどのように切り替えるかを分子レベルで追究することを目指して、情報科学による解析と分子生物学的な実験により総合的に解析する。これまで私達のグループは、遺伝子発現解析RNA-seqを休眠細胞1細胞単位でおこなう技術開発を通して、休眠細胞が目覚めていく時間軸のなかでどのように遺伝子発現状態が変化していくのかを経時的に解明するタイムラプス型のシングルセルRNA-seq解析を実施したTsuyuzaki et al. Nature communications 2020; Tsuyuzaki et al. Current Genetics 2021; 露崎ら、バイオサイエンスとインダストリー 2020

 これらの解析の結果、目覚めの段階に応じて発現する遺伝子の種類や量が変動することが分かってきた。これは、休眠からの目覚めの時期にクロマチン構造が大規模な変化を引き起こすことでゲノム規模での発現調節を誘発する可能性を示唆するものである。
 そこで本研究では、染色体のオープン・クローズ解析ATAC-seqなどを実施して、これまでのRNA-seqによるビッグデータと組み合わせて解析することによって、休眠からの目覚めのなかで、細胞が状態をある段階から次の段階へと変化させるにあたりどのような遺伝子が発現するのか、また、どのような遺伝子の染色体領域のクロマチン構造が変化するのかを明らかにすることを目指した。その結果、発芽の目覚め誘導後、13時間でクロマチン構造が大規模に変化する様子を捉えることができた。