表題番号:2023R-018 日付:2024/04/18
研究課題電気化学的部分酸化による電力併産型カーボンリサイクル基幹物質転換に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 創造理工学部 教授 中垣 隆雄
研究成果概要
変動性再生可能エネルギーの大量導入による電力の時空間的な需給ミスマッチを解消するため,安価かつ容易な輸送形態を考慮したエネルギー貯蔵媒体への変換,いわゆるPower to X技術が必須となる.その例としてメタンを常温常圧で液体として貯蔵できるメタノールに変換・利用する方法が期待されているが,メタンからメタノールへの直接変換は難しく,Syngasを経由して発電しながら変換する電気化学的部分酸化の研究を進めている.この反応器として低温のイオン伝導性をもつGDCを電解質層としたSOFCを用い,発電とエネルギー貯蔵のコプロダクションを具現化すべく,今年度はCO選択率向上のため部分酸化触媒の機能層の積層方法を検討・開発した.
セル形状として作製の自由度が高いコイン型SOFCを選定し,触媒層積層法として電解質層と同様に,均一な薄膜化が期待できるスピンコート法を採用した.コスト削減のため担持層にγ-Al2O3を,機能層にNiを選定した.電解質と同様に,乾式混合+湿式混合した後にアノード基板に積層し,1350 ℃にて焼結した.電解質スラリーと同様の組成にてスラリーを試作した結果,触媒層の均一性やスラリー分散が不十分であったため,バインダーや分散剤の分量を適正化した結果,これらの課題は解消された.また,SOFC作製時間の短縮のため,触媒層と電解質層の同時焼結についても検討した.先に作製したスラリーを用いた結果,スラリーと基板の収縮率の差異に起因する膜剥離や基板の変形が顕著となった.そこで,フラットな反応界面確保のために実施するアノード基板の脱脂温度を1350 ℃に変更した上で,収縮差の緩衝目的に触媒スラリーに電解質主成分のGDCを混合した結果,膜剥離と変形において大幅な改善が見られた.