表題番号:2023R-017 日付:2024/03/28
研究課題各種高性能鋼材を使用した鋼部材の耐荷力特性に関する基礎的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 創造理工学部 教授 小野 潔
研究成果概要
 SBHS,ステンレス等,高性能鋼を橋梁へ適用することにより,鋼橋のコスト縮減,耐久性向上が期待できる.他方,SBHS,ステンレス等の応力-ひずみ関係は,鋼材ごとに大きく異なっているが,その情報については,十分に得られるとは言いがたい.また,各鋼材の応力-ひずみ関係の違いは,それら鋼材を使用した鋼部材の耐荷力特性に影響を与える可能性があるが,鋼材の応力-ひずみ関係と耐荷力の関係に関する情報は十分に得られていない.そこで,本研究では,まず,各高性能鋼の材料試験を実施して,その応力-ひずみ関係に関する情報を得る.そして,その応力-ひずみ関係の情報を構成則に反映して鋼部材の耐荷力解析を実施して,応力-ひずみ関係が鋼部材の耐荷力に与える影響に関する基礎的な情報を得ることを目的とする.
 本研究では,各種鋼材としてSBHS700に着目して検討を実施した.SBHS700の応力ーひずみ関係の特徴として,降伏棚を有するもの,降伏棚が存在しないラウンドハウス形のもの,この2種類が存在することが挙げられる.そこで,SBHS700の引張り試験結果から,これら2つの特徴を持つ応力ーひずみ関係を抽出し,その実験で得られる応力ーひずみ関係から,解析で使用する構成則の材料定数を決定した.そして,両縁支持板を対象に,決定した材料定数を用いて弾塑性有限変位解析を実施して,応力ーひずみ関係と耐荷力の関係について検討を行った.その結果,最大荷重を降伏荷重で除した値について,幅厚比パラメータの大きい領域では,2つのモデルで大きな差が見られなかった.それに対し,幅厚比パラメータの小さい領域では,ラウンドハウス形の応力ーひずみ関係を用いた解析結果が,降伏棚を有する応力ーひずみ関係を用いた解析結果より大きくなった.このことは,両縁支持板の耐荷力は,幅厚比パラメータの小さい領域で応力ーひずみ関係の影響を受けやすいことを示しており,既往の実験的研究で観察された事実とも一致する.