表題番号:2023R-011 日付:2024/04/05
研究課題両生類の造血幹前駆細胞の分離
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教育学部 教授 加藤 尚志
(連携研究者) 新潟大学大学院自然科学研究科(理学部) 教授 前野貢
研究成果概要
全ての末梢血球は,造血器に存在する多分化と自己複製能を併せもつ造血幹/前駆細胞(HSPC)から増殖,分化して派生する。ヒトやマウスなどの一部の生物ではHSPCの発現分子の性質が詳細に検討され,HSPCの分離が可能になっている。しかしそのほかの脊椎動物のHSPCの解析と純化は殆ど未着手であり,生物における造血幹細胞の普遍性や多様性は不明である。本研究は,近年新たなモデル動物として注目されつつある無尾両生類ツメガエルのHSPCの同定,純化の確立を目指している。アフリカツメガエル(Xenopus laevis)の肝臓に僅かに存在するHSPCを含む細胞画分は,抗トロンボポエチン(TPO)受容体であるMplの認識モノクローナル抗体とT12を組み合わせると高度に濃縮されるが,顆粒球系細胞の混入が課題となっていた。検討を重ねた結果,それらの一部はT5陽性であり,T5の併用で顆粒球系細胞の一部は除去可能であった。さらに好中球のミエロペルオキシダーゼ(MPO)発現を緑色蛍光蛋白質(GFP)で可視化する遺伝子改変ツメガエル(新潟大学・前野教授らが開発:Yamada-Kondoら, Dev Growth Differ. 2022;64(7):362)のHSPC分離を試行したところ,HSPC画分に混入するGFP陽性の好中球系細胞を除去することができた。また,HSPC分離に使用する栓球認識モノクローナル抗体(T12,T5)の細胞膜抗原は未知であったため,抗原同定のための質量分析法の改良を進めた。その結果,T12抗原の完全同定はできなかったが,T5抗原の有力候補を同定し,検証を進めることになった。以上,本研究期間において,両生類の造血幹細胞の特性解析ならびに純化法の確立に向けて大きく進展した。