表題番号:2023R-009 日付:2024/04/04
研究課題20世紀ドイツ・フランスにおける《翻訳の思想》:思考変容としての翻訳とメタファー
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文学部 教授 西山 達也
研究成果概要

本研究は、20世紀フランス・ドイツにおいて出現した翻訳をめぐる諸思想のなかで、「翻訳」と「メタファー」という二つの事象の間に本質的な連関を見いだす傾向がいかにして生じ、その結果、思弁的翻訳論がいかなる可能性を獲得したのかを明らかにすることを目指す。解釈学、現象学、概念史研究といった様々な思想潮流の中で展開した思弁的翻訳論においては、「翻訳」に内包される言語の変形可能性を人間の思考の根幹に据える諸理論が提示されたが、その際、「広義の翻訳」(言語内翻訳・記号間翻訳)の一形態である「メタファー」という現象に、言語と思考の変形可能性そのものを体現する役割が担わされた。本研究は、従来の思想史研究において十分に捉えられてこなかった、このような思弁的翻訳論における「メタファー」と「翻訳」との内的連関を明るみに出すとともに、思弁的翻訳論が「翻訳」概念の刷新を通じて、いかにして概念・思考の変革可能性と、主体の変容可能性を構想するに至ったのか、その前提を確認した。

この確認作業の出発点として、本研究では、エマニュエル・レヴィナスの講演「メタファー」(1962, Œuvres, t. 2)及びその準備メモ(Œuvres, t. 1所収)、そして、講演「メタファー」の重要な箇所において参照されているカール・レーヴィットの論文「人間と世界の媒介者としての言語」(1958, Sämtliche Schriften, Bd. 1)に着目し、その背景にあるハイデガーとニーチェのメタファー論を調査した。また、レヴィナスに関しては、ハイデガーの言語論・技術論と対照させながら彼のメタファー概念を再構成することも試みた(「メタファーと現実」『哲学世界』第46号にてこの成果を発表した)。レーヴィットに関しては、教授資格論文(1928年)およびその前提となっている共同存在論、L・クラーゲス経由のニーチェ受容との関係、古典文献学との関係(B・スネルのギリシア研究の参照)等の精査に着手した(「絶対的メタファー:レーヴィットからレヴィナスへ」『西日本哲学年報』第31号にて成果を発表した)。