表題番号:2023R-005 日付:2024/04/05
研究課題請求異議訴訟への既判力の作用と作用場面の判断基準
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 法学部 准教授 中本 香織
研究成果概要
 本研究では、請求異議訴訟における訴訟物及び当事者適格に関する研究を実施した。次年度以降の研究課題として、給付訴訟を前訴、その給付訴訟における給付判決の債務名義に係る請求異議訴訟を後訴とする事例で、前訴給付判決の既判力が後訴に作用するか否か、作用する場合の根拠を明らかにすることを目的としており、本年度はその準備段階として冒頭のテーマを中心とした研究を行った。
 民執法35条1項の請求異議訴訟における当事者適格について、通説は、債務名義に債務者として表示されている者・その承継人・執行力の拡張を受ける者・それらの代位債権者に原告適格を、債務名義に債権者として表示された者・その承継人・執行力の拡張を受ける者、に被告適格を肯定する。これに対し、同項が規定しているのは、訴訟追行権の意味での当事者適格ではなく、誰が執行力の排除をめぐる実体的地位(実体適格)を有するかであるという見解が主張されている。これらの見解を踏まえ、本研究ではまず、実体適格とは、訴訟物たる権利関係の帰属主体性の問題であるところ、請求異議訴訟における訴訟物を如何に解するかで、誰に実体適格が認められるのかが異なるとの問題提起を示した。その上で、請求異議訴訟における訴訟物については学説上のいずれの見解に拠っても、実体法上の権利関係が訴訟物でない以上、実体適格を有する者は誰か、という説明はできないこと、したがって請求異議訴訟においては実体適格という概念は問題にならないと結論付けた。