表題番号:2023Q-024 日付:2024/04/02
研究課題フラビン誘導体を触媒とする、リンの不斉酸化反応の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 国際理工学センター(理工学術院) 准教授 山本 佳奈
研究成果概要

 本研究の目的は、3価リン5価リンへの不斉酸化(酸素化)反応の確立である。当研究室では、これまでに補酵素フラビン誘導体を触媒とした空気酸化反応により収率99%以上、立体選択性27%ee.の系を確立している。研究助成期間中では、その立体選択性の向上を目指し、様々な構造のフラビン誘導体を用いた場合の寄与を調べた。

 本反応系は前年度までの研究より、立体保持もしくは立体反転を伴う二つの反応経路により酸化反応が進行することが分かっている。しかし、そのような反応系の立体選択性の向上には困難が伴うため、本年度は一方の経路を遮断するような触媒あるいは基質を検討した。特に、反応機構の観点から観測された立体選択性は立体保持経路からのもので、反転経路に選択性はないと仮説を立てているため、反転経路が遮断あるいは遅延させる触媒/基質に焦点を置くこととした。

 フラビン誘導体はアミノアルコールまたはアミノ酸から45段階で調製した。これまでに調製したフラビン誘導体を含めた13の誘導体を合成し、其々について酸化反応を追跡した。誘導体はその架橋部位にある2本の側鎖(アミノアルコールの側鎖にあたる)およびアロキサン構造のA環部位に置換基を加えたものをデザインした。この実験の結果、2本ある側鎖は一方のみで立体制御可能であること、選択性を左右する構造の傾向など知見が得られた。また、A環に置換基をつけたものに関しては立体選択性は左右されなかったが電子吸引基により反応速度が著しく低下することが分った。今回は電子供与基をつけたものは調製しなかったので、今後の課題となる。

 また、立体反転経路を遮断する手段として、環状リン含有化合物の基質を合成し酸化反応における選択性を検討することとした。既知の環状のリン化合物である2,3-dihydro-1-phenylbenzo[b]-phosphole6段階で合成し、酸化反応を試みた。しかし、この基質は非環状の基質よりも自動酸化が早いため、結果の確定には更なる検討が必要である。