表題番号:2023Q-014 日付:2024/04/05
研究課題複素結合型回折格子を用いた単一モード半導体レーザの研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 大学院情報生産システム研究科 准教授 硴塚 孝明
研究成果概要
光ファイバ通信用光源における周波数制御の重要性が高まり、デジタルコヒーレント通信用の狭線幅レーザ、データセンタ用の高速直接変調レーザにおける周波数変動の抑制は、光ファイバ通信の高速化および長延化に向けた重要課題である。本研究では、複素結合型回折格子構造を用いた、単一モード半導体レーザの周波数変動の抑制手法を数値シミュレーションにより検討した。シリコン基板上のInP薄膜層内に埋込量子井戸活性層とパッシブ層を周期的に配置した分布帰還(DFB)型活性層を形成し、屈折率結合と利得結合からなる複素結合回折格子を構成した。併せて、モード選択機能を有する複素結合回折格子DFBの後段に分布ブラッグ反射鏡を配置した分布反射型(DR)レーザを構成して波長選択性を向上した。活性層領域よりパッシブ領域の実効屈折率が高い逆相複素結合回折格子を構成することで、活性層内のキャリア密度変動に伴う発振波長の変動を抑制できる。活性層のキャリア密度変動に伴う屈折率変動と利得変動に対して、回折格子の結合係数の変化に伴う閾値利得変動を与えて発振波長の変動を抑制し、実効線幅増大係数を75%低減できることを示した。また、Q値の高いレーザにおいては単一モード発振に対する空間ホールバーニング効果の影響が課題であることから、逆相複素結合回折格子DRレーザにおける空間ホールバーニング効果の影響をモード結合理論による数値シミュレーションにより調べた。解析の結果、逆相複素結合回折格子DRレーザが空間ホールバーニング効果に対する単一モード発振の安定化機構を有していることを示した。本構造は、狭線幅レーザおよび低チャープ直接変調レーザへの適用に有効であり、加えて高い端面反射耐性が期待されることから、オンチップ光集積用光源として有望であることを示した。