表題番号:2023Q-011 日付:2024/02/20
研究課題拡張したランダムペプチド集団から効率的に薬物リードを取得する方法の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 教授 小出 隆規
(連携研究者) 先進理工学研究科 博士課程2年 米田崇人
研究成果概要
申請者らが開発したビーズ結合型ヘテロキラルなコンビナトリアルなランダムペプチドライブラリであるOB2^Pシステムは、L体D体が入り混じったペプチド性創薬リード化合物を得るために有望である。しかし、アミノ酸残基数が1つ増加するごとに同一化合物のビーズ上での提示分子数が2分の1となるため、検出感度の向上が最大の問題である。本研究では、ビーズ上のペプチドに結合した微量タンパク質のシグナルをいかにして検出するかにフォーカスした検討を行った。 ①ビーズの二次元表面への固定化によるシグナル拡散の抑制:洗浄中にペプチドビーズから標的タンパク質が脱落することを防ぐために、ペプチドビーズあるいは標的タンパク質を二次元表面に固定化することを検討した。粘着テープ、プラスティック表面への固定化、ウエスタンブロッティング様の膜への転写等について検討したが、顕著な感度の向上は観察されなかった。 ②チラミドをもちいたシグナル増幅:チラミドは酵素的にラジカルを発生し、近傍の芳香環に共有結合的に結合する試薬で、細胞や組織染色における増感法として近年よく用いられる。標的タンパク質とHorseradish peroxidaseをコンジュゲートしたものを利用して、ペプチドビーズへの結合シグナルを増幅できるかどうかを検討した。この手法では、明らかなシグナルの増幅が観察されたが、その一方で、S/N比の低下が問題となり、有効性は確認されていない。 以上のことから、いまだOB2^Pシステムの応用は5アミノ酸残基以下のペプチドに限られる。さらなる応用範囲の拡大のためには放射性同位元素による標識といった方法を採用する必要があるかもしれない。