表題番号:2023Q-004 日付:2024/02/06
研究課題超高感度で特異的なデング熱診断システムの開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教育学部 教授 伊藤 悦朗
研究成果概要

デング熱はデング熱ウイルス(DENV)によって引き起こされる熱帯および亜熱帯の気候における蚊媒介疾患であり、近年大きな社会的および経済的負担となっている。 しかし、現在の検出方法は、時間がかかり、高価であるか、特別な訓練が必要であるため、DENV の早期診断には不十分である。 非構造タンパク質 1 (NS1) DENV 感染中に分泌されるため、早期検出法の開発に適したバイオマーカーと考えられている。 本研究では、以前に報告されたチオ NAD サイクリング ELISA (超高感度 ELISA) に基づいて NS1 タンパク質の検出方法を開発し、1.152 pg/mL の 検出感度 を達成することに成功した。 検出システムの臨床診断の可能性も、NAAT 法で確認された 60 件の DENV 陽性検体と 25 件の DENV 陰性検体を含む 85 件の患者検体を使用して評価された。 その結果、98.3% (59/60) の感度と 100% (25/25) の特異性が明らかになり、カッパ係数 0.972 NAAT データとほぼ完全に一致した。 本研究は、NAAT 法と比較して DENV を検出するための低コストで使いやすい方法として超高感度 ELISA を使用する診断の可能性を示しており、低所得国では大きな利点となる可能性がある。

NAAT法は感度と特異度が優れているため、現在に至るまで DENV 診断のゴールドスタンダードであり続けている。米国疾病管理予防センターは、検出と血清型同定のために CDC DENV-1-4 リアルタイム RT-PCR マルチプレックス アッセイを提供している。患者検体に、QIAamp DSP Viral RNA Mini kit (Qiagen) を使用して RNA を抽出することを推奨しているが、これには費用と時間がかかるだけでなく、患者検体の量によって制限もある。さらに、アッセイ結果はヒト検体から精製されたテンプレート RNA の量と品質に依存する。このことは、結果が訓練を受けなければならない技師の技術に大きく依存することを示している。我々の超高感度 ELISA 法は、NAAT 法に比べて操作が簡単で、追加のサンプル前処理が不要で、少量のサンプルを受け取るだけですぐに検出を開始できる。これらの利点は、我々の超高感度 ELISA 法が NAAT 法よりも簡単で安価な検出法のニーズを満たす可能性があることを示している。