表題番号:2023Q-003 日付:2024/02/06
研究課題議会制の批判から擁護へ:モスカの現代的混合政体論の再検討
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教育学部 准教授 千野 貴裕
研究成果概要
議会制民主主義の機能不全は今日喫緊の世界的問題である。しかし、議会制に対する批判は今に始まったことではなく、20世紀前半にも盛んであった。本研究は、20世紀前半のイタリアの思想家ガエターノ・モスカが、一時は同時代の議会批判と歩調を合わせつつも、ファシズム台頭の時代に議会制の擁護へと転換した理由を検討する。文脈的読解の方法論に基づいた体系的なモスカ研究を提起することで、こうした問題状況を解決する糸口を提供することを企図している。私のモスカ研究はおおむねこのような位置付けをもっている。本特定課題研究は、このモスカ研究の一部をなすものである。研究期間が一年に満たないものであるため、研究内容を絞り込み、モスカを研究するための方法の確立を目的とした。というのも、上記のような特徴をもつモスカを研究していくためには、少なくとも政治思想史と比較政治の両方の知見を必要とするからである。本研究によって、イタリア語を中心とした必要文献を入手し、読解することができた。現在、この研究を英語論文にまとめ、政治思想関連の主要ジャーナルに投稿する準備を進めている。なお、以上の研究課題設定には、イタリア政治・イタリア政治思想の専門文献が日本の図書館にはほとんど所蔵されていないという事情があることを付記したい。