表題番号:2023N-001 日付:2024/04/04
研究課題古代カンボジアにおける建築生産体制の研究:瓦生産を中心に
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文化構想学部 教授 田畑 幸嗣
(連携研究者) 理工学術院 准教授 小岩正樹
(連携研究者) 理工学術院総合研究所 招聘研究員 石塚充雅
研究成果概要
 本研究は、古代カンボジアにおける建築生産体制の解明を目指し、アンコール朝(9〜15世紀)の王都における瓦生産に焦点をあて、生産体制の実証的解明(生産の規模、製品の特徴と技術的系譜、工人集団の移動等)を目的とする。
 調査対象は、アンコール朝の10世紀前半の一時的な遷都先であるコー・ケー遺跡群出土資料であり、同遺跡群での窯跡遺跡の発掘調査、同遺跡群王宮跡・寺院の調査を実施し、これまでのアンコール王都での調査成果も踏まえ、生産地研究と消費地研究を統合して、瓦を中心とした建築生産体制の復元を目指した。
 これらの成果として、生産地出土資料調査では、遺物の資料化、遺物の型式学的分析、窯詰め法の復元を進め、アンコール地域の窯業との影響関係をほぼ立証できる目処がたった。さらに消費地である王都、寺院区での遺構調査を通じ、生産地出土資料である瓦との対応関係の分析を現在進めている段階である。また、同窯跡の地下レーダー探査では、特定の箇所において強い反応を検知し、窯体位置および構造の特定につながる成果を得ることができた。コー・ケー遺跡群の陶器工房は、王権に直結する寺院群へ主として瓦と儀器を提供するための瓦当兼業生産体制であり、また供給された瓦も、寺院の石造祠堂を部分的に葺いており、後代のアンコール地域における瓦葺の祖型とも考えられることが明らかとなるなど、大きな成果をあげることが出来た。
 しかし、コー・ケー遺跡群は一時的な王都でありながら規模が大きく、窯跡遺跡では広範囲な未調査地域が残っており、生産の実態やその技術的系譜に不明な点が多い。さらに、こうした生産センターが、未踏査地域が多いため都市としての全貌が不明な王都にどのように組み込まれていたのかといった都市計画上の位置づけも不明である。これらの問題を解決するためには、工房区域の地下探査とGISによる古代都市計画解析という新たなアプローチが必要となろう。