表題番号:2023E-048 日付:2024/04/05
研究課題海軍甲種飛行予科練習生の戦中戦後経験をめぐる社会学的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 平山郁夫記念ボランティアセンター 講師 筒井 久美子
研究成果概要
2023年度は3つの成果を得た。①旧制中学生には、高等学校から大学へ、海軍兵学校や陸軍士官学校から士官へというエリートコースに進める可能性が開かれていた。一方、「甲種飛行予科練習生」(甲飛)制度は特務士官までしか進級できず、立身出世を志す中学生にとっては中途半端な進路であった。そこで、この「中途半端さ」に中学生はどのように対応しようとしたのか、甲飛経験者の手記に書かれた志願動機を中心に分析することで明らかにした。2023年10月9日に日本社会学会大会で報告を行った。
②報告者が調査を進めている甲飛出身者は「名古屋海軍航空隊」が編成した「神風特別攻撃隊草薙隊」(草薙隊)として特攻出撃して亡くなっている。草薙隊について知ることが出来る資料として航空隊が位置していた愛知県豊田市で編纂された資料と、出撃基地が位置していた鹿児島県霧島市溝辺町で編纂された資料がある。そして、どちらの地域でも記録資料を編纂、慰霊碑建立、慰霊祭を開催してきた。そこで、この2つの地域を事例として、「特攻」の記録・記憶は、どのような主体が、どのような力学の中で継承されてきたのかを明らかにするため、関係者への聞き取りや郷土資料を調査した。現在、データを整理しており、2024年度に学会報告等を予定している。
③草薙隊は名古屋海軍航空隊から鹿児島県霧島市に位置していた国分第一基地へ移動、さらに国分第二基地へ移動して特攻出撃をしている。国分第一・第二基地が立地していた地域の住民らは、基地建造にあたっては動員や立ち退きが行われ、1945年3月から6月にかけて特攻出撃が行われたが、鹿児島神宮参拝、近隣の歓楽地で遊興するなど基地を出て地域を訪れる出撃待機中の隊員達を目撃したり、もてなしたり、交流したりといった接触をしている。そこで、出撃基地の地域住民から見た「特攻隊」を明らかにするべく、霧島市の戦争経験者への聞き取りを実施、郷土資料を調査した。現在データを整理しており、2024年度に学会報告等を予定している。