表題番号:2023E-046 日付:2024/04/02
研究課題平安期の法華懺法関連文献からみる儀礼化過程の検討
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) グローバルエデュケーションセンター 助手 矢島 正豊
研究成果概要
本研究では、日本の平安期から修されている仏教儀礼の法華懺法を扱い、その儀礼化過程、特に儀礼次第の成立過程を検討した。法華懺法は日本の平安中期頃から法会として営まれた記録がみえ始め、その後、天皇や上皇、貴族を中心に武家にまで浸透していた仏教儀礼である。そもそもこの儀礼は中国隋代の僧智顗が著した『法華三昧行法』をもとに次第が構成されているが、同書は修行の行法書であり、その内容がいつ頃から儀礼化したのかは明らかになっていない。そのため本研究では、儀礼次第の内容の変遷を追うことで、儀礼化過程の検討を試みた。
先行研究や報告者のこれまでの研究では、法華懺法の次第や法華懺法の現行次第の原型と考えられる次第が平安院政期から鎌倉前期頃までしか遡れなかったが、今回の研究では紙本の資料以外の資料として、日本仏教の埋経資料である瓦経に注目した。瓦経には仏教の経典が残されていることがほとんどであるが、国内三箇所(伯耆大日寺瓦経、備中安養寺瓦経、肥前築山瓦経)に儀礼の次第である法華懺法の瓦経が出土していることがわかり、それらの内容を調査することで、平安中期から平安院政期までの法華懺法の次第を検討することが可能となった。そして、瓦経に残る次第と紙本の資料に残る次第とを比較することで、現存資料に基づく次第成立過程を考究することができた。さらに、現行次第の成立に平安院政期から鎌倉前期の京都大原の僧侶たちが関与している可能性も明らかにできた。