表題番号:2023E-045 日付:2024/04/01
研究課題解析的手法を用いた有限・対称多重ゼータ値の統一的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) グローバルエデュケーションセンター 助教 小野 雅隆
(連携研究者) 東京理科大学 学部3年生 川村花道
(連携研究者) 金沢工業大学 学部3年生 前阪拓巳
研究成果概要

当年度は, まず昨年度に得られていた1/2-多重ゼータ値, 1/2-有限多重ゼータ値, 1/2-(精密化)対称多重ゼータ値の重み付き和公式に関する川村花道氏(東京理科大学)と前阪拓巳氏(金沢工業大学)との共著論文を執筆し, International Journal of Number Theory に掲載が決定した. 

次に広瀬稔氏(名古屋大学)と村原英樹氏(北九州市立大学)との以前の共同研究で得られていた補間多重ゼータ値および補間有限・対称多重ゼータ値に対する大野型関係式を, 超幾何函数を通して解析的に証明できるかどうかを検討したが, 上手くいかなかった.

一方で, インデックスの深さが2の場合に補間有限・対称多重ゼータ値の大野型関係式を変形すると, 補間有限・対称多重ゼータ値の双対版の和公式とも呼ぶべき関係式が得られた. これはあらかじめHoffman双対インデックスをとってから和公式を考えたものが, 不定元とリーマンゼータ値の類似物で明示的に書き下す公式である. 通常の補間多重ゼータ値やインデックスの第i成分が2以上である有限・対称多重ゼータ値の和公式は, ディカンマ函数(およびその類似物)を通して超幾何函数を用いて証明できることが知られている. これを考慮すると, 補間有限・対称多重ゼータ値の双対版和公式も超幾何函数を用いた解析的証明が期待できるが, Hoffman双対を施していることで安直な類推では証明が困難であった. Hoffman双対関係式はポリログのLanden接続公式を用いた証明が知られているため, 今後はLanden接続公式を超幾何函数で解釈するアイディアを推進し, 上記の困難の克服を目指す.