表題番号:2023E-034 日付:2024/02/06
研究課題Nwd1-KOマウスを用いたプリノソーム形成機構の解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 助教 山田 晴也
(連携研究者) 人間科学学術院 教授 榊原伸一
研究成果概要

全ての真核細胞に必須な分子であるプリンはDNARNAATP/GTPの原料となる。プリンは脳の正常な発達に必須であり、その代謝異常は先天性てんかんや精神遅滞、などの重篤な疾患を引き起こす。哺乳類は新生(de novo)経路と再利用(salvage)経路の2種類のプリン産生経路を持ち、通常時はエネルギーコストの低いsalvage経路が使用するが、細胞分裂など多量に核酸を必要とする際は、de novo経路を駆動することが明らかとなっている。しかし、脳の発達におけるプリン合成経路の時空間的な使い分けおよびその生理的な意義については未だ不明である。本研究では、脳発生の進行に伴い、駆動するプリン合成経路がde novo経路からsalvage経路に切り替わり、胎生初期の大脳皮質形成にはde novo経路の活性化が非常に重要であることを明らかにした。また胎生期にプリン de novo合成を阻害するとmTORシグナル経路の低下を介した前脳特異的な脳奇形を引き起こすことを明らかにした。本研究成果は、国際学術誌「eNeuro」で発刊されプレスリリース発表した。なお、当該論文はeNeuro誌の「Editor’s pick」にも選出された。

さらに、現在プリン新生を担う巨大タンパク質複合体プリノソームに関与すると予想される因子Nwd1を解析中である。NwdKOマウス肝臓においては、小胞体のCa2+transporterであるSERCA2の機能不全による小胞体ストレスが増加し、それに起因した肝臓の繊維化や肝細胞死を併発する非アルコール性脂肪肝炎(NASH)が誘導されることを明らかにした。別途、Nwd1KOマウス脳における表現系とプリノソームとの関連は現在解析中である。Nwd1KOマウス肝臓における表現系に関しては「bioRxiv」にプレプリントとして発表し、現在国際学術誌に論文投稿中である。