表題番号:2023E-033 日付:2024/03/22
研究課題立法の視点で見る保険の仕組みを用いた環境政策の制定過程と保険の限界
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学総合学術院 社会科学部 助手 吉田 朗
研究成果概要
本研究では、「立法の視点で見る保険の仕組みを用いた環境政策の制定過程と保険の限界」タイトルとして研究を実施した。特に、地震保険や油濁賠償に焦点を当てた。
「地震保険」に関する研究成果は以下のとおりである。地震保険(国の再保険)に関する国会議事録を検証した。当初は、「地震保険に関する法律」は、地震保険ではなく災害保険との認識があったが、地震保険の制度設計だけに途中から切り替わっている。地震保険に関して、逆選択の危険性など、政府が問題点を把握した上で、「地震保険に関する法律」の制度設計がなされていることも明らかになった。地震が保険システムに馴染みにくい点も政府が把握していたことも明らかになった。問題は、政府が認識していた問題がどのように克服されたかが見えないことにある。近年の議論からすると、普及率は上昇しても、普及促進に向けた具体的な政策を論ずるまでには至っていないのが現状である。
「油濁賠償」に関する研究成果は以下のとおりである。初めに、油濁賠償に関する国会議事録を検討した。検討の結果、国会審議では、強制保険の仕組みの限界が指摘されていたのではないかと推察されることが判明した。強制保険政策は無保険者を0にする政策である。しかし、無保険者が生じ、かつ、無保険者による座礁船の放置事例が存在することも明らかになった。無保険者0到達には時間時間がかかることも示唆された。油濁賠償の仕組みは、船舶に強制保険を法に基づいて命ずることで、賠償資力の確保・確実な被害者への救済が期待されるものである。これは、油濁事故をした汚染者が保険金を使って賠償をする汚染者負担原則(PPP)の理念そのものである。以上の点を踏まえれば、保険を用いた政策として成功例であり、PPPの理念に合致する合理的な仕組みであるといえる。