表題番号:2023E-027 日付:2024/02/05
研究課題高次元空間における力覚フィードバックを用いたインタラクションに関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 助手 五十嵐 治雄
研究成果概要
数学、物理、情報といった分野をはじめとして、現代においては3次元を超える高次元データが至る所に現れるようになった。こうしたデータを扱うためには高度な抽象的概念の理解が必要となるため、高次元データをより直感的に表現することができれば、高次元を扱う様々な分野の発展の促進が期待される。近年はVR技術の発展によって、高次元データを3次元仮想空間に投影することで、リアルタイムかつインタラクティブに可視化してユーザに提示する手法が提案されている。しかしながら、投影は視線方向の1次元情報の損失を伴い、その結果は3次元空間に生きる人間にとって馴染みのないものとなるため、直感的な表現という目標の達成には至っていない。
そこで本研究では、3次元空間で人間が3次元物体を理解するプロセスに着目し、ユーザが視覚と触力覚を用いて高次元空間に没入できる新たなシステムの構築をおこなった。人間は未知の3次元物体を理解する際に、様々な方向から観察し、また自然に手を触れることで、視覚と触力覚によって幾何的形状や構造情報を得ている。このような人間の直感的行動を、VR技術と触力覚提示技術を統合することで高次元へと拡張した。
本システムでは、4次元空間における力覚を提示するための新しいアルゴリズムを提案した。本アルゴリズムは、4次元空間における力覚ベクトルを2つに分解し、左右の手に同時に提示する。4次元空間においては、並進運動は4次元ベクトルで表されるため、そのままでは3次元空間に存在する人間に対して力覚提示をおこなうことができない。一方で、従来のバーチャルリアリティによる4次元空間の提示手法において、4次元空間の映像は3次元空間への投影によっておこなわれる。そこで、力覚の4次元ベクトルを、投影によって縮退する1次元ベクトルとその他の3次元ベクトルとに分解することで、それぞれの提示をおこなった。