表題番号:2023E-026 日付:2024/02/15
研究課題磁壁によるアメーバコンピューティングの理論的実装
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 助手 宮島 悠輔
(連携研究者) 応用物理学科 教授 望月維人
研究成果概要
本研究の達成目標は、物理的実装に適したアメーバ模倣型組合せ最適化マシンの計算モデルを提案することである。最終的にその計算モデルを、電子回路やスピントロニクス素子などのデバイスによって物理的に実装することを目指す。代表的な組合せ最適化問題としてn都市巡回セールスマン問題(TSP)を扱った。先行研究で提案された、アメーバ模倣型組合せ最適化マシンの計算モデルAmoebaTSPを改良して、改良AmoebaTSPとAmoebaTSP漸化式という2つの計算モデルを提案した。AmoebaTSPではアメーバの体積保存則を表現するために、アメーバの足に対して非局所的な制約を課していた。この制約によって、物理的実装に利用できるデバイスの種類が大きく制限される。実際、これまでに電荷保存則を利用するアナログ電子回路による物理的実装しか提案されてこなかった。私は、AmoebaTSPを詳しく調べ、最適化の結果に良い影響をもたらす3つの条件を見つけた。その結果、AmoebaTSPに課された非局所的な制約は、解探索において必要不可欠ではないことがわかった。それら3つの条件をモデルに導入することによって、非局所的な制約を取り除いた、改良AmoebaTSPを構築した。さらに、デバイス構造を複雑化させる要因になる分岐や数え上げなどの計算を取り除き、AmoebaTSP漸化式を構築した。これらの計算モデルは、非局所的な制約を持たないため、AmoebaTSPと比べ、より多くのデバイスによって実装が可能である。さらに、より優れた解探索性能を示すことがわかった。特に、改良AmoebaTSPにおいては、解探索に要するステップ数が都市数の1/2乗に比例するという、非自明なスケーリング則を示すことがわかった。現在、以上の成果をまとめた論文を執筆中である。この成果に関連して4件の国内学会発表、1件の国際シンポジウム発表を行った。