表題番号:2023E-024 日付:2024/04/04
研究課題ラジカル遷移金属錯体によるレドックスフロー電池用電解液の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 講師 岡澤 厚
(連携研究者) 先進理工学部 修士1年 角地 貴行
(連携研究者) 先進理工学部 修士1年 郅 東澤
(連携研究者) 先進理工学部 学部3年生 小岩 浩太郎
研究成果概要

 再生可能エネルギーを電力系統に導入するためには、大規模な定置型蓄電システムが必要となり、その有力候補のひとつとしてレドックスフロー電池が注目されている。しかし、実用化されているバナジウム系は腐食性の硫酸溶液や資源制約の強いバナジウムの利用が問題となっている。そこで我々は、資源制約フリーな有機物や鉄系金属錯体を正極液活物質として利用し、包括的な電池性能(エネルギー密度・サイクル特性、クーロン効率など)の向上を目指してきた。特に、電解液中活物質の溶解度を高めることは電池の体積エネルギー密度に直結するため、非常に重要な技術といえる。

 本研究では非水系レドックスフロー電池用の正極液活物質の候補として、約1 V (vs. SHE)程度の高い酸化還元電位を有するターピリジン鉄錯体の溶解度を改善する手法の開発を進めてきた。(1)配位子上にポリエチレングリコール系置換基を導入、および(2)分子の非対称化および活物質の混合、の方法によって、無置換体[Fe(tpy)2](PF6)2の溶解度0.16 M(アセトニトリル溶媒)から最大で0.68 Mまで溶解度を向上させることに成功した。これは、いわば活物質の多成分化による溶解度向上の新規手法であり、活物質依存性の少ない汎用的なものだと期待される。また、水に溶解しないため見向きされてこなかった分子性活物質に対して、高濃度LiTFSI水溶液を用いて溶解させた水系電解液の開発も検討した。近年、TEMPOラジカルを高濃度水系電解液に用いる手法が開発されたので、我々はこれを応用してTEMPO4-位にケトン基の付いた誘導体が同様に34 Mまで溶解することを見出した。今後、資源制約フリーな電解液によるレドックスフロー電池の高エネルギー密度化が期待される。