表題番号:2023E-017 日付:2024/03/26
研究課題3体相互作用の空間形状を観測する手法に関する理論研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 基幹理工学部 講師 高橋 淳一
(連携研究者) 早稲田大学基幹理工学部 M2 黒川優輝
(連携研究者) 早稲田大学基幹理工学部 教授 山中由也
研究成果概要

 本研究の元となった論文(Phys. Rev. A 103, 043334 (2021))では、2粒子ではあるものの、相対座標と重心座標に分解可能な調和振動子系を用いた1次元系の自由時間発展を扱っていた。そのため、数値計算の分割幅を相互作用の空間変化幅に対し十分細かく取ることが可能であった。しかしながら、3体以上の相互作用となると、重心自由度をうまく分離できたとしてもなお、2粒子系となる。さらには、一般に相互作用も非等方となるため2次元以上での計算が必要となる。そのため、本年は3体相互作用検出の予備段階として、2次元2体粒子衝突ダイナミクスから取得した密度分布データを用いて相互作用を抽出する方法を検討した。

 2粒子かつ2次元の衝突計算となると膨大な計算量と時間が必要となる。そこで、本年度は、Askar-Cakmak法(J. Chem. Phys. 68, 2794 (1978))による時間発展法を用いた計算コスト削減の検証を行った。本手法は、陽解法ではあるが、よく知られたCrude-Euler法がO(分割幅^2)であることに対し、陰解法であるCrank-Nicolson法と同じO(分割幅^4)となり、なおかつ陽解法特有の安定性があるとされる。しかしながら、相互作用を再現する兆候が見られたものの、必要な分割数には届かず、現状優位な結論は得られていない。

 一方、今回の計算を2次元Bose-Einstein凝縮系を用いた物理リザバーコンピューティングに転用した。物理リザバーコンピューティングとは、再帰型のニューラルネットワークを物理系のダイナミクスで代替し、測定データについてのみパラメータの学習する機械学習の一手法である。この研究では、Bose-Einstein凝縮体に時系列データをレーザーでのスパイクパターンとしてエンコードし、その結果生じる波紋の密度分布関数を用いて時系列データの予測を行った。その際、時系列データの計算に関して、過去の情報を適度に落とす散逸効果が予測性能を高めることを見出した。