表題番号:2023E-002 日付:2024/04/04
研究課題政権交代が民主主義の深化に及ぼす効果に関する実証研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 政治経済学部 助手 門屋 寿
研究成果概要
 本研究の目的は、政権交代が民主主義の深化に及ぼす影響を、政権交代の持つさまざまな特徴を考慮したうえで実証することであった。選挙による政権交代は大きな脚光を浴びる政治現象であるにもかかわらず、その影響を実証的に分析した研究は多くない。とりわけ、権威主義や新興民主主義体制における政権交代が民主主義の深化にいかなる影響を及ぼすのかについては、十分に議論されてきたとは言い難い。本研究は、政権交代は民主主義の深化をもたらすのであろうか。そして、その効果は政権交代のさまざまな特徴に条件付けられるのであろうか、という問いに答えることを目指した。
 本研究では、政権交代が持つ特徴の理論的な整理を行ったうえで、その影響を推定することを試みた。一括りに政権交代と呼ばれる現象であってもその特徴はさまざまである。たとえば、野党が僅差ではなく、圧倒的な得票差をもって政権交代を実現する場合や、軍政後の民政移管選挙などのように、それまでの与党が参加せずに、野党同士の選挙で勝利した政党が政権を獲得する場合がある。こうした政権交代の特徴を考慮しつつ、民主主義のさまざまな側面を従属変数とした計量分析を行った。
 しかしながら、分析の結果は芳しいものではなかった。一般に想定される政権交代と民主主義との相関関係は、政権交代の内生性に起因している可能性があることがわかった。政権交代が持つ内生性を考慮したうえでその影響を推定すると、さまざまな特徴を持つ政権交代が、民主主義の深化に寄与しているとは結論づけられなかった。分析結果が思わしくなかったため、当初予想された研究成果を上げることはできなかった。ただし、本研究は、政権交代の影響については、因果推論の知見を取り入れ、より慎重に再検討する必要があるという重要な問題を提起するものといえる。