表題番号:2023C-705 日付:2024/03/30
研究課題近ケーラー多様体上のhigher spin Dirac作用素に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等学院 教諭 富久 拓磨
研究成果概要
Dirac作用素やRarita-Schwinger作用素に関して,数学や物理学において,様々な研究がなされている.本特定課題では,Dirac作用素やRarita-Schwinger作用素を一般化したhigher spin Dirac作用素の性質を探ることを目的として,研究を行った.特に,以前の研究において得られていた定曲率空間におけるhigher spin Dirac作用素の因数分解公式を,6次元球面をモデルとした特別な性質を持つ概エルミート多様体である近ケーラー(nearly Kähler)多様体上の公式として拡張することに着手した.nearly Kähler多様体において,Rarita-Schwinger作用素を用いて定義されるある微分方程式の解であるRarita-Schwinger場を求める研究を行った際には,リーマン多様体においてよく用いられるLevi-Civita接続の代わりに,nearly Kähler多様体の持つ特別な接続であるエルミート接続を用いて公式の変形を行い, Rarita-Schwinger場を導出していた.本研究においても,エルミート接続を用いることで,higher spin Dirac作用素に関する公式を得ることができるのではないかという考えのもとで問題に着手し,曲率項が残ってしまったもののある式を得ることに成功した.一方で,得られた式に現れる曲率項の計算方法を確立することができなかったため,higher spin Dirac作用素の因数分解公式やhigher spin Dirac作用素の核まで求めることは未だ出来ていない.来年度以降,曲率項の具体的な計算方法について考えていくことが課題となる.