表題番号:2023C-704 日付:2024/03/26
研究課題伊勢物語の章段構成方法に関する研究―歌と語りの齟齬から―
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等学院 教諭 松島 毅
研究成果概要
 本研究は、伊勢物語の〈語り〉を切り口として、現行伊勢物語を成立論にとらわれず、統一体と見做し、その構造を明らかにするところから新たな作品読解の可能性を提示することを目標とする。今年度の作業として取り組んだのは、〈語り〉を切り口とした第二段の新たな把握、さらにその切り口から初段と第二段の関係を捉えなおすことであった。これは、最終的な目標である、伊勢物語全体の構造解析の足掛かりとなることを期待してのものである。
 第二段の把握に関しては、従来からもその解釈に議論のあった、主人公に対する「まめ男」との評価について、語り手による皮肉との読みが可能である。そこから、やはり古今和歌集との関係について議論のある、「起きもせず」歌を、いわば主人公のひとりよがりを露呈する歌として読み直す、ひいては章段自体を把握しなおすことができるのではないかとの目論見を抱いていたのだが、この点については、ある程度説得力のある議論を展開できる見通しがつき、次年度において論文にまとめたいと考えている。さらに初段と二段の関係についても、従来とは違った形でのセットの関係として説明することができそうであり、さらには第三段以降へつながる筋も見えてきた。これらは今後の課題として構想していきたい。また、本研究と直接的な関係はないが、本研究の延長上で行っていた第六十段の検討の成果を織り込む形で学会発表を行うことができた。論文化したものが学会誌に掲載も決定し、現在入稿準備中であるが、その過程で、第六十段と似て非なる展開を持つ第六十二段の両者の関係について改めて考えるべきとの問題意識も得ることができた。