表題番号:2023C-703 日付:2024/04/05
研究課題日本語教育における聴解力向上を促すe-learning教材の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 日本語教育研究センター 准教授 大久保 雅子
研究成果概要
  本研究は、日本語音声習得のためのe-learning教材を開発し、学習者の自律学習を促すことを目的としている。  
 近年、日本語教育機関において、発音に特化した授業が行われるようになってきたが、このような授業を受けたことがない学習者にとって、自己の音声上の問題点を把握することが困難である。音声上の問題点の有無は、発音習得への影響に留まらず、聴解や語彙等の領域にまで影響を及ぼすと言われている。本研究で2023年度に日本語聴解授業で実践を行ったところ、以下の点が明らかになった。
①有声・無声破裂音の聴取に問題がある学習者が多い。
②特殊拍の聴取に問題がある学習者が多い。
③母音の聴取に問題がある学習者が少なからずいる。
 これらの音声上の問題点により、聴解において別の言葉として認識してしまった学習者や大意を掴むことが困難となった学習者が多くみられた。しかしながら、聴解授業で音声指導の時間を確保することは難しく、また、学習者の音声上の問題点は母語によって異なっていることが多いため、聴解授業での音声指導は極めて困難であると言える。そこで本研究では、学習者が自律的に学ぶことができる動画教材を開発した。取り上げた音声項目は、①子音(有声・無声破裂音)、②長音・促音、③母音である。本教材の構成は、「音韻知識の導入」→「聞く練習」→「発音練習」となっている。「音韻知識の導入」では要点を絞った解説を行い、「聞く練習」および「発音練習」では学習者自身が音声上の問題点の有無を把握できるよう間違えやすい日本語音声を練習に組み込んだ。
 本教材は、音声指導を受けたことがない学習者でも練習ができることを目指して開発を行ったが、発音に特化した授業においても反転授業や復習用教材として活用できるように①②③の他に④アクセントを加え、YouTubeにて公開した。また、学習者が自律学習の継続ができるよう、日本語発音練習サイト開設した。 今後は、開発した教材を使用した授業実践を行い、効果検証を行う。