表題番号:2023C-697 日付:2024/03/27
研究課題15・16世紀イタリアにおけるカッシウス・ディオ『ローマ史』とその受容
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 国際学術院 国際教養学部 准教授 福山 佑子
研究成果概要
本研究は3世紀前半に書かれたカッシウス・ディオによる『ローマ史』のテクストが、15・16世紀のイタリアでいかに流通し、作品の内容がいかに受容されたかを明らかにするものである。申請者は早稲田大学図書館所蔵の1503年頃の印刷本に収録された、カッシウス・ディオの作品(正確にはクシフィリヌスによる要約)のラテン語訳とその再録について研究を実施し、2022年度に論文化した。その際に存在を知ったのが、現在ヴェネツィアのマルチャーナ図書館に所蔵されている『ローマ史』の写本2冊である。これらの写本はコンスタンティノープル出身のベッサリオンによって1468年に寄贈されたものであり、この写本を通じてディオのテクストやその翻訳が15世紀末から16世紀にかけて知られることになったと推測できる。
そこで、2月17−23日にイタリアのフィレンツェとヴェネツィアにおいて調査を実施した。実質的には18日から22日の4日間の調査であったが、フィレンツェ大学を訪問してこの分野についての研究者と意見交換したほか、フィレンツェ国立図書館での関連文献調査、ヴェネツィアのマルチャーナ図書館での該当写本の調査を実施した。その成果はイタリアの研究雑誌に英語での論文投稿に向けて執筆をすすめている。
ディオやその要約であるクシフィリヌスのテクストはギリシア語からのラテン語訳を通じて16世紀に徐々に広く読まれるようになっていくが、本研究の過程で集めた資料をもとにテクストの流布や翻訳の流布がいかに行われたのかを可視化することで、ローマ時代のギリシア語歴史史料がどのようにルネサンス期のイタリアで受容されたのかが明らかになると考えられる。