表題番号:2023C-696 日付:2024/09/12
研究課題「パスカルの『パンセ』における聖書―作品の源泉と20世紀への遺産」
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 国際学術院 国際教養学部 准教授 檜垣 樹理
研究成果概要
パスカルの『パンセ』における聖書の位置付けを、過去3年間にわたって検証してきたが、
今回は、『パンセ』の成立を解く鍵であると考えられるパスカルの「奇跡」についての考察から「表徴」のコンセプトへの展開を、パウロの書簡「コリント人への第一の手紙」1章18ー25にある「神の知恵と十字架の愚かさ」のパラドックスをもとに読み解き、この聖書箇所と『パンセ』の骨格をなす「3つの秩序(身体ー知性ー恩寵としての愛)」との関連を、パスカルが深く瞑想した「創造ー受肉ー贖罪ー終末に至る恩寵のダイナミズム」の動きの中に位置付け、その神学と霊性の観点からの意義を考察した。これは、『パンセ』という書物をその源泉から理解するのに必要であるだけではなく、その読者であったペギー、三木清などの思想家、アンリ ド リュバックらの20世紀を牽引した神学者達への遺産と現代への意義を理解するのに有益であると考えられる。