表題番号:2023C-686 日付:2024/04/05
研究課題非言語インタラクションによる内発的動機付けを誘発する学習支援ロボット動作の体系化
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 教授 松居 辰則
研究成果概要

本研究では,教育メディアとしてのロボットの利用によって学習者の内発的動機付けを導くことを目的とした基礎的な研究を行った.特に,学習者とロボットの非言語情報によるコミュニケーションの効果を検討した.本研究では,ロボットと学習者とのインタラクションにおける内発的動機付けを以下の一連の流れで捉えている.1)擬人化による学習環境への誘引(没入感の向上),2)ロボット動作に関する意図推定,3)行動に関する主体的な意思決定.習支援ロボットには多様な役割(“Tutor or teacher”“Peer”“Novice”)が期待されており,様々な場面に応じて適切に役割を与える設計ないし制御が求められる.ここでは,特に,上記の2)おける非言語コミュニケーションの重要性を述べる.“Mentor”として利用する場合を考えたときは,ロボットが表出する動作からロボットの「意図」を適切に学習者に伝達する必要がある.しかし,一般的にロボットの動作可動域や呈示可能な表現は人間とは異なるため,人間と同様な意図の表出をロボットで行うことは容易ではなく,ときに設計者の意図しない解釈を成されることもしばしば存在する.つまり「意図の誤帰属」を避けることは重要な課題であるが,そのためにこれまでは発話による意図の明示が一般的であった.ところが,発話による意図の明示は必ずしも有効であるとは言えない.つまり,明示的な意図の伝達はその意図が「真正な」ものであるかを評価する機構を誘発し,その受容を一旦忌避させる可能性がある点である.したがって,如何に言語情報に頼らず,学習者にとってその意図を適切に伝達できるかを検討することは重要な課題である.そこで,本研究では特に「学習支援ロボットとの非言語長期インタラクションによる「Peerさ」形成の実験的検証」を行い,学習者の内発的動機付けの可能性に関する知見を得た.また,ロボットによる学習支援における非言語コミュニケーションの効果について整理した.