研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 人間科学学術院 人間科学部 | 助教 | 西中 宏吏 |
(連携研究者) | 早稲田大学人間科学部 | 酒井彩音 | |
(連携研究者) | 早稲田大学大学院人間科学研究科 | 博士前期課程 | 小林えり佳 |
(連携研究者) | 早稲田大学人間科学学術院 | 教授 | 嶋田洋徳 |
- 研究成果概要
サイコパシーは、表面的な魅力、不安の欠如、罪悪感の欠如、高い衝動性など反社会的ないし社会破壊的な特徴を示す臨床的概念である(Cleckley, 1976)。サイコパシーにおいて、攻撃行動と共感性の関連については多くの研究がなされているが、知見が一貫していない(Hare & Neumann,2009; Hare, 1991)。本研究では、サイコパシーのサブタイプに着目して、攻撃的行動と共感性の関連について検討した。
研究協力者は、18歳以上の一般成人584名(平均年齢39.34±13.39歳)であった。サイコパシーを対人関係面、行動面、情動面の3側面から評価したのち、高サイコパシー傾向者においてクラスター分析を行った。その結果、バランス型、対人-行動優位型、対人-情動優位型の3つのサブタイプに分類された。高サイコパシー傾向群では反応的・能動的攻撃が高頻度であった。さらに、対人-行動優位型は他のサブタイプよりも統計的に有意に両方の攻撃的行動が高頻度となった。サイコパシーの3側面を独立変数、認知的・情動的共感性を従属変数とした重回帰分析、および、認知的・情動的共感性を独立変数、反応的・能動的攻撃を従属変数とした重回帰分析をそれぞれ行った。情動的共感性は、いずれの攻撃的行動にも影響しなかったが、認知的共感性は反応的攻撃を抑制した。サイコパシーの対人関係面が高いほど、あるいは、行動面が低いほど、認知的共感性が高いことが示された。
以上の結果から、サイコパシーにはサブタイプがあること、対人-行動優位型で攻撃的行動が顕著であること、サイコパシーの行動面が高いと認知的共感性が低い傾向にあり、反応的攻撃のリスクが増大することが示された。本研究は、攻撃的行動を示すサイコパシーの治療的介入において、サブタイプを考慮する必要があることを示すものである。特に、サイコパシーの行動面が顕著な者においては反応的攻撃を低減するために認知的共感性を向上させることが有効であることが示唆される。他方で、サイコパシー傾向の高い者では能動的攻撃が表出されやすい一方で、共感性との関連は認められなかった。サイコパシーにおける能動的攻撃の生起要因や介入方法についてのさらなる研究が求められる。