表題番号:2023C-678
日付:2024/04/04
研究課題Extended Producer ResponsibilityとPolluter Pays Principle の経済分析
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 社会科学総合学術院 社会科学部 | 教授 | 赤尾 健一 |
(連携研究者) | Hoseo University (Korea) | Professor | Geum Soo Kim |
(連携研究者) | Tokai University | Professor | Eiji Hosoda |
- 研究成果概要
経済活動が直接間接に環境に影響を及ぼすとき、経済主体はどこまでその責任を負うべきかという問題は、古くは1972年にOECDが加盟国にその採用を勧告した汚染者支払い原則(PPP)から、最近ではサプライチェーンの排出量算定に関わるGHGプロトコール(いわゆるスコープ1, 2, 3)にわたって、環境政策の基本的なスキーム形成に関わる重要な問いである。経済学的には、責任を負わせることで、必要な環境保全が図られ、社会をより効率的なものとするならば、その原理は望ましいと言える。本研究では、PPPの拡張とOECDがみなす拡大生産者責任(EPR)が、必ずしもPPPと両立しないことを指摘し、そのいずれの原理を選択することが望ましいかを、標準的なマクロ動学モデルを分析することによって明らかにした。具体的に非整合が生じるのは廃棄物問題であり、PPPが廃棄者に責任を負わせるのに対して、EPRは生産者に責任を負わせる。モデルは、1部門または2部門モデルで、企業が選択する技術によって消費廃棄物の負の外部性を軽減できるとするものである。結果は、1部門モデルではPPPとEPRの両方の原理が必要となる(生産者と消費者の両方が汚染の責任のために課税される)。しかし2部門モデル(消費財のみが汚染を発生させる)においては、PPPが採用されて消費者のみが税を払う。これは生産者に汚染税を課しても、税によるコスト上昇が生産物価格の違いに吸収されるためである。以上の結果は、PPPとEPRの2つの原理の使い分け、あるいは両方の採用の妥当性が、市場が十分に競争的か、財の環境配慮性の違いが市場価格に十分に反映されるかに依存することを示している。