表題番号:2023C-676 日付:2024/03/29
研究課題地域循環共生圏の事業展開メソッドの開発:EUの経験とスマート社会技術とのコラボレーション
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学総合学術院 社会科学部 教授 鷲津 明由
研究成果概要
スマート農業への取組をニッチ・イノベーションと位置づけ,各都道府県における取組の進捗状況をサスティナビリティ・トランジションの理論に基づいて定性的に評価した。用いた調査資料は,20233月時点で,日本の各都道府県が公表している農業農村振興計画や農林推進振興計画などの農業分野における最上位計画,および,スマート農業推進計画・方針など,スマート農業化の推進に関連して各県が策定した資料である。調査の結果,スマート農業への取組が進んでいる県では,推進計画に沿ってトランジション・マネジメントの手順に合致した推進施策が採られているが,「柔軟性のある仕組み」や「タイミングを逃さず介入する仕組み」という点について,取組の無い場合が多かった。また,2000年代から2010年代に開発されたスマート農業の技術であり,土地生産物の平均価格や,生産者一人が耕作可能な農地面積の上昇に関わる技術を中心に,その定着化が目指されていることが分かった。一方,スマート農業の具体的推進計画を作成してはいないものの,農業の上位計画でスマート農業の将来的見通しを詳細に策定している県では,イノベーションのための具体的なマネジメント施策を欠く一方,「問題点の把握がされているか」や「長期的視点をもつか」といった面では,ランドスケープの変化を的確に把握し視野の広い見通しがたてられていると考えられた。そして,炭素貯留やGAPの取得など,面積当たり土地生産物を改善するための新しいイノベーションへのチャレンジを視野に入れていることが分かった。農業の再エネ利用やカーボンニュートラルに関する取組について,それがスマート農業との一貫性を持って進められている状況とは言えなかったが,再エネ活用や脱炭素を将来ビジョンに盛り込み,地方創生のきっかけにしようとする県も出現していた。