表題番号:2023C-673 日付:2024/04/14
研究課題現代米国における急進的歴史家のライフヒストリー ―北米における活動的知識人の系譜として―
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学総合学術院 社会科学部 教授 篠田 徹
研究成果概要
本研究は、一九八〇年代以降登場し、世代を越えて現在もなお活動を続ける現代米国の急進的歴史家(radical historian)、そのなかでも新労働史(new labor history)という分野を開拓し発展させた歴史家達を、北米における活動的知識人(intellectual activist)の一系譜として位置づけ、そのライフヒストリーを現在もなお存命ないし活動する特定の対象者に対するインタビュー等も行い、その登場の経緯や背景、活動の内容や経歴、自身へのふりかえりも含め、世代や社会的集団としての急進的歴史家たちに対する自己評価などを叙述することを主な目的とする。昨年度は急進的歴史家をその一系譜と位置付けた北米における活動的知識人に関し、二次文献を用いながら歴史的なサーベイ研究を行い、活動家的知識人の原集団の形成において、一九世紀前半のニューイングランド地方を中心としたリベラルないしラディカルなキリスト教派、特にクエーカー教徒とユニタリアン教徒達の存在と組織や活動が大きな意義を持ったことを発見し、これらのキリスト教派の奴隷制廃止運動を始めとした様々な平等主義的運動への関与が、活動家的知識人にとって培養器的役割を果たしたことを確認できた。今年度は、急進的歴史家の第二世代に属する活動家の一人であるマカレスター大学の歴史学の前教授で現在ミネソタ州セントポールの労働者階級の居住地に創設したコミュニティセンターで活動するピーター・ラクレフ氏とコンタクトを取り、インタビューに向けての関係性の構築し、また氏の履歴や研究歴、活動歴などを調べ、その内容の把握に努め、今後の聞き取り調査への対応を含め、そのための準備を整え一部聞き取りを終えた。また同じくマサチューセッツ大学ボストン校でレーバー・センターを創設して地域の労働運動の再興に努めた故ジェームズ・グリーン教授が残した資料が同校図書館にあり、同地に赴きその研究を始めた。