表題番号:2023C-670 日付:2024/04/05
研究課題災害廃棄物処理の効率性と社会イノベーションの関係分析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 大学院環境・エネルギー研究科 講師 李 洸昊
研究成果概要
近年、日本を含む世界各地で自然災害が頻発し、それに伴う災害廃棄物の発生が深刻な問題となっている。災害廃棄物は衛生状態の悪化、生活環境の劣化、交通やライフラインの復旧妨害など、復旧・復興の遅延を引き起こす。この課題に対処するため、災害廃棄物の適切かつ迅速な処理と資源の有効活用、さらに環境への影響を最小化することが求められている。このような点を実現させるためには、時間的効率性、経済的効率性、社会的効率性を考慮する必要がある。
時間的効率性とは、災害発生後の初動対応が迅速に行われ、災害廃棄物の早期処理が可能になることを意味する。特に、事前に災害廃棄物処理計画を策定しておくことで、災害発生時の対応スピードを向上させる。経済的効率性とは、災害廃棄物の再生利用により、新たな資源として利用することが可能となり、経済的な損失を最小限に抑えることができる。また、災害廃棄物の適切な分別・選別により、処理コストを削減することも可能になる。社会的効率性とは、地域社会全体の協力により、災害廃棄物の処理が円滑に進められることを意味する。自治体間で情報共有を図ることで、社会全体の災害対応能力を向上させる。
以上の効率性の重要性は、国レベルでも認識され、災害廃棄物処理モデル事業の活用、処理のアーカイブ構築、グッドプラクティスの共有、再生利用事例集の作成、広域連携体制の構築など、災害廃棄物処理・管理における様々な取り組みが行われている。これらの取り組みは、新たな価値の創出と社会システムの改善・最適化を促進する、社会イノベーションとして評価できる。
本研究は、災害廃棄物処理の効率化を図るためには、時間的効率性、経済的効率性、社会的効率性を重視すべきであり、それには社会イノベーションが伴わないといけない。これにより、災害後の迅速な復旧と持続可能な復興にもつながると考えられる。社会全体のレジリエンスを高めることが必要である。