表題番号:2023C-665 日付:2024/03/26
研究課題細胞-組織融合モデル構築を目指した1細胞モデル解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 教授 高松 敦子
(連携研究者) 早稲田大学 修士2年 福田真大
研究成果概要
創傷治癒過程では、傷口側の自由空間における細胞と、組織中の細胞の振る舞いが大きく異なる。前者では、細胞形態を自由に変化させ、活発な運動を行う。後者の組織中では、周辺の細胞に囲まれ静的な振る舞いをする。組織中の細胞モデルとしては、バーテックスモデルが広く用いられているが、活発に動きまわる細胞の記述には向かない。一方、我々は1細胞の多様な振る舞いが記述できる粒子-ファイバーモデル(PFモデル)を構築した。本研究では、組織中の細胞も、孤立した細胞も同時に記述できる細胞-組織融合モデル構築を目指している。バーテックスモデルでは、細胞は頂点と辺で構成され、辺が細胞の輪郭を表す。頂点の位置について細胞の大きさ、辺の収縮力、隣接細胞の接着力に関するエネルギー関数を設定し、それらが最小化するように、頂点に関する運動方程式を解く。一方、PFモデルは、接着斑に見立てた粒子と中心に粒子を設定し、細胞骨格に相当するファイバーで接続している。中心粒子と周辺粒子を結ぶファイバーの存在がバーテックスモデルと異なる構成となっている。さらに、その中心方向のファイバーはそこにかかる力に応じて太くなり、前進力を得る仕組みを取り入れている。これが、細胞が自由に動きまわる原動力である。そこで、本研究ではまずは、PFモデルをバーテックスモデル形式に書き換え、1細胞モデルの定式化を行った。細胞の形態が対称形である条件下で方程式を簡略化し、モデルの安定性解析を解析的に行た。その結果、定性的にはPFモデルと同等の細胞形態を再現する可能性が見いだせた。今後はこれを拡張し、任意形態の解について、解析を進め、組織モデル構築への足がかりとする。