表題番号:2023C-656 日付:2024/04/01
研究課題可変性モデルのスケーラブルな解析・検証のためのモデル分割に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 創造理工学部 教授 岸 知二
研究成果概要
 可変性モデルは複数のバリエーションを持つシステムのモデル化に使われ、命題論理に基づいてモデルの解析や検証が行われる。しかしバリエーションの数は組み合わせ的となるため膨大であり、スケーラビリティの問題が発生しやすい.応募者は、今までに確率的なメトリクスに基づいて複数のフィーチャを選択し,それらを利用して可変性モデルをより小さなバリエーション数を持つ複数のモデル群に分割する手法を提案し,複数のバリエーションの性質を一度に検証するファミリーベースモデル検査に適用してその有効性を確認した.
 今回の研究では、まずこの従来手法の特性を分析した.具体的には公開されている様々な可変性モデルに対して従来手法を適用し,その分割によるバリエーション数の削減効果を確認した.その結果,従来手法は多くの場合効果的な削減ができるものの,ランダム性を含んでいるために分割効果のばらつきが大きいことがわかった.実用性の観点からはこうしたばらつきを抑えることが望ましいため,ばらつきを減らすために可変性モデルの木構造を低計算量で解析し,明らかに分割効果のないフィーチャを除外する改善手法を提案した.具体的には同値関係にあるフィーチャや排他関係にあるフィーチャを同定し,それに基づき不要なフィーチャを除外した.
 改善手法は,同値関係や排他関係にあるフィーチャを含む可変性モデルに対してのみ改善効果があるが,公開されている可変性モデルを調査したところ,大半の可変性モデルがそれらを含み,平均で同値関係により約30%程度,排他関係により約8%程度のフィーチャが除外できることがわかった.評価実験によって改善手法を従来手法と比較したところ,改善手法は分割効果のばらつきを低く抑えることができより有効な分割ができることがわかった.今後は蓄積したデータに基づき分割効果の定量的な推定を行う手法の検討などを進めたい.