表題番号:2023C-655 日付:2024/03/10
研究課題フィンランド・日本におけるナショナルロマンティシズムの興亡
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 創造理工学部 准教授 渡邊 大志
研究成果概要
ナショナリズムとしての国際様式であった近代建築やその周辺を含む文明世界を乗り越える方法を発見することを目的として、第二次世界大戦の敗戦国であり、地球上での地政学的共通点の多い日本とフィンランドにおけるナショナル・ロマンティシズムとみなせる建築表現とその構造を明らかにするための実践的研究を行った。フィンランドでは、20世紀初頭にツースラ湖周辺に建設されたAinola,Ahola,Harosenniemiといった木造アーティストコロニーを調査し、その特質を明らかにした。また、日本においては高松・宇佐八幡宮を中心として勃興した瀬戸内八幡信仰の歴史文化に着目し、祭祀に用いられた装束・仮面・山車などのデザインとそれらを作り出した職人、産業の構造を調査し、瀬戸内海を介して構築されたネットワークの依り代となるデザインエレメントの抽出と一部復元を行った。加えて、京都の無隣庵、五浦六角堂など、フィンランドのアーティストコロニーと同時期の日本に建設された近代山荘を調査し、比較研究を行った。
これらのことは、その場所特有の材料と技術を用い、かつ、建築を代表とする対象物のために専門化された技術や職人が存在しない点において、日本とフィンランドに共通して現れた土着的な建築文化の一端とみなすことができる。
こうした共通点について以下の講演会を要請され、2023年6月にフィンランドセンター主宰の学術セミナーにて「日本近代山荘建築・コミュニティの社会的特性」を、9月に北欧文化協会にて「種を蒔く人ーひとつなぎの建築をめざしてー」を、2024年2月に滋賀県立大学にて「亜周辺におけるナショナル・ロマンティシズムとナショナリティ」と題した講演会をそれぞれ単独で行った。
こうした成果を広く社会及び学術界に周知しつつ、研究はさらに焦点を絞り、高度化させていく予定である。