表題番号:2023C-654 日付:2024/02/07
研究課題自然由来汚染土壌からの重金属類の動態に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 創造理工学部 教授 川邉 能成
研究成果概要

2010年における土壌汚染対策法の改正に伴い、自然由来重金属類による土壌汚染がわが国で増加傾向にある。また、土壌中に含まれる重金属類は雨水などの浸透により帯水層へ到達し、地下水汚染を引き起こすことがある。特にわが国における地下水汚染では、ヒ素やフッ素による汚染件数が上位を占めており、その多くが自然由来によるものと考えられている。一方、地下水位は季節変動などにより変動するため、飽和帯と不飽和帯の境界における透水性、毛管圧力、マトリックポテンシャルなどに変化が生じ、間隙水中の重金属類などの移動や土壌からの溶出挙動が異なってくるものと考えられる。実際にあるVOC汚染現場の地下水中のVOC濃度は地下水位の変動により大きく変動しており、地圏環境中における重金属類などの移動挙動や土壌からの溶出挙動は大きく影響を受けることが明らかになっている。そこで、本研究では、実験と数値モデルにより、飽和帯と不飽和帯の境界における、地下水位の変動に伴う水頭や土壌の透水性の変化が自然由来重金属類の動態に及ぼす影響について検討した。カラムに砂質土壌を充填し、不飽和帯に模擬汚染物質としてNaCl溶液を注入した。その後、水位を変化させ飽和帯へ移行するNaCl濃度を測定することで動態を評価した。その結果、飽和帯と不飽和帯の境界における移動現象については、概ね一次元移流分散方程式で評価できることが明らかになった。また、地下水位の変動により、土壌内では水頭差の変化にともなう流れや水飽和率の変化が生じたため、水位上昇の過程では、汚染物質の帯水層への移行量は減少した。一方、水位上昇がなくなり水位が一定になると、土壌の水飽和率が大きくなり透水性が増し、水位上昇前より汚染物質の帯水層への移行量は増加した。水位低下の過程では、土壌が水を保持しやすくなることで、水飽和率の変動がほとんどなくなり、汚染物質の移動に大きな影響を及ぼさないことが明らかになった。