表題番号:2023C-648 日付:2024/03/27
研究課題消費者のプライバシー懸念が価格差別の許容度に与える影響に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 産業経営研究所 助手 芳賀 悠基
研究成果概要

本研究は、ECサイトやモバイルアプリの利用における企業の個人情報収集に対して消費者が知覚する懸念に焦点を当てたものである。それらの企業は価格や広告のパーソナライズを目的として消費者の購買履歴データや位置情報データを利用している。こうしたデータの収集と利用には利用者の許可が求められているが、データ利用の許可意向には個人によって差があることが考えられる。特に、許可によってクーポンやポイントといった利益を得られる状況では、自身の個人情報と引き換えにそれらの利益を獲得するかどうか、消費者の行動は多様であることが予測される。

題目設定当初は独立変数をプライバシー懸念、従属変数を価格差別の許容度とした研究を想定していたが、レビューや理論を確認した結果、プライバシー懸念の先行要因に着目することも重要であるという結論に至った。したがって、本年度には価格差別戦略への反応を確認すると同時に、消費者のプライバシー懸念を高める要因について複数の実験やアンケート調査を実施した。調査の結果、消費者のリソース・スケアシティ(資源の欠乏感)が位置情報の取得を伴うクーポンの利用意向に一定の効果を与えることが明らかになった。具体的には、利用するデバイスのバッテリー残量によって消費者のリソース・スケアシティが顕在化する時、位置情報の利用というコスト・リスクを伴うクーポンの利用意向が向上することが示された。この、「位置情報の取得を伴うクーポン」は、プライバシー懸念を引き起こすような価格差別の一つの例であり、プライバシー懸念と価格差別の許容という研究文脈に一定の貢献をする結果であると言える。この成果の一部は、商業学会第74回全国研究大会(2024525日26日)にて発表する予定である。