表題番号:2023C-647 日付:2024/04/03
研究課題日本におけるジョブ・エンベデッドネスの指標探索
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 産業経営研究所 助手 松井 希望
研究成果概要

本研究課題では、日本の労働市場で増加する離職に対処するための組織内外に関する要因について検討を進めていく。

離職に関する先行研究では、主に職務内容や人事制度をはじめとする職務内要因(職務に直接関係のある要因)に焦点を当ててきた。しかし、職務外要因(職務に直接関係のない要因)による離職も多く発生しているのが現状である。家族からの影響はとくに大きい。育児・介護を理由に離職せざるを得ない事例はその代表例であろう。先進国を中心に高齢化が進んでいることから、特に家族の介護を理由とした離職は年々問題として拡大していくに違いない。この上、離職にとどまらず、新卒採用の場面でも家族の存在感は大きくなっている。日本国内では内定先への就職について内定者の親族からの内諾を得る「オヤカク」を行う企業が増加傾向にあり、新入社員の親が入社式にリモートで参加可能とする企業もあるという。以上の例から見るに、必ずしも従業員自身の意志や職務内容に関する要因の問題解決だけでは離職を防ぎきれない面が存在すると考えざるを得ない。

そこで本研究では、先行研究のように職務内要因に加えて「ジョブ・エンベデッドネス」や「家族によるエンベデッドネス」など、職務外の要因(職務を遂行する上での環境要因)を含めて、離職に対処するための要因を検討する。

先行研究によれば、ジョブ・エンベデッドネスは組織内外の関係や犠牲と関連し、離職に影響を及ぼすことが確認されている。同様に、家族によるエンベデッドネスも離職に影響を与える可能性が指摘されている。これらの要因の再検討や、類似概念であるP-E fitとの関連性を分析する上で、日本特有の労働慣行や文化を考慮に入れる。

2023年度は、先行研究のレビューを中心に進めてきた。次年度以降は日本におけるジョブ・エンベデッドネスの構成要素とP-E fitとの関連を検討するため、質問票の作成と、アンケート調査によるデータの収集および分析を目指す。可能であれば、インタビュー調査による分析結果の検証を行う。