表題番号:2023C-646 日付:2024/04/05
研究課題フルレンジリーダーシップとチーム創造性の研究 〜自然言語処理を用いて〜
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 産業経営研究所 助手 高坂 啓介
研究成果概要

フルレンジリーダーシップ理論とは、変革型リーダーシップ(transformational leadership:以下TFL)と交換型リーダーシップ(transactional leadership:以下TSL)、自由放任型リーダーシップからなり(Bass,1985) 、さまざまなリーダーシップ理論の中で、モデルの当てはまりが高い理論である。TSLTFLが加わることで、成果を予測する効果が高まることが、実証的に支持されている(Bycio et al, 1995; Geyer & Steyrer, 1998; Hater & Bass, 1988; Waldman, Bass & Yammarino, 1990)。TSLによる単なる目標達成を超えて、より高い意味と目的へとプロセスを導くために、 TFLが必要であると主張しているが、まだ実証的に検証されていない。 そこで、TFLTSLのより適切な配分を明らかにし、チーム創造性との関係を調査したい。

どの程度の割合が望ましいのか、テキスト分析で日本の経営者はどの程度TFLTSLであるか分析をした。今回の課題はTFLTSLのより適切な配分を明らかにすることに留まった。サンプルは日本経済新聞に連載されている「私の履歴書」である。著名な経営者や文化人、学者などの人物の生き方や考え方、社会やビジネスに対する姿勢などを深く掘り下げる。

私の履歴書で経営者20人を対象に、TSLTFLの発揮度を分析した。一人分でおよそ30の文章があり、一文およそ1300文字である。対象者が社長を務めているときに関する文章のみを分析対象とし、TSL(業績主義の報酬、能動的例外管理、受動的例外管理)、TFL(理想化された影響(帰属)、理想化された影響(行動)、個別配慮、鼓舞する動機付け、知的刺激)を5段階で評価した。そして、平均化した結果、理想化された影響(帰属)4.49、理想化された影響(行動)4.52、個別配慮3.93、鼓舞する動機付け4.30、知的刺激4.13、業績主義の報酬2.92、例外管理(能動的)4.32、例外管理(受動的)2.02という数値を示した。これらの数値から、分析対象の経営者たちはTSL4割発揮し、TFL6割発揮しており、TFLを大きく発揮してTSLの一部を発揮するのが良いという既存研究の結果と同じ結果を示した。