表題番号:2023C-632 日付:2024/04/04
研究課題内発的動機に関する実験研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 商学部 講師 川中 大士朗
研究成果概要

 2023年10月に研究基盤形成に係る交付決定を受けて以降,社会的選好の中でも特に内発的動機に基づく行動の公理論的基礎付けおよび,実験実施のための準備を進めてきた.早稲田大学学内での実験実施には至らなかったものの,採択後の6か月間において以下の成果を得ることが出来た:

 (1) 内発的動機に関するトピックの中でも特に,social-image concernとself-image concernに関する行動的含意について理論的性質を示した.さらにこれを基にした学内外の研究者とのディスカッションを通じて,当初に計画していた実験計画を改善することができた.当初の計画では被験者の主観的確率を計測するためにHossain and Okui (2013) が理論的に開発したスコアリングルールの手法を用いる必要があったが,Danz, Vesterlund, and Wilson (2022) に代表される近年の実験論文ではスコアリングルールを用いた実験手法の問題点が指摘されており,文献上に技術上の問題(パズル)があった.これに対して本研究では,スコアリングルールによって被験者の主観的確率を推計することなくデータ解析を行うための理論的な手法を開発した.

 (2) 学内外の3つの研究グループと共同で実験研究を実施することになった.これらの研究グループの中には国際的共著も含まれる.それぞれの研究グループとの実験は,2024年度に実施される予定である.それぞれの研究は内発的動機に基づく行動を実験的手法によって実証するという点では共通しているがそれぞれ独立した研究であり,当初に計画していたよりも発展的なプロジェクトに展開することができた.