表題番号:2023C-626 日付:2024/03/31
研究課題子どもを対象とした跳躍力に対する骨格筋量と神経系機能の貢献度の検討
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教育学部 講師 吉村 茜
研究成果概要
【背景】子どもの運動が重要視される今日、その実践現場では、発育発達の特徴を理解した上で個に応じたトレーニング戦略を立案することが重要である(Mountjoy et al, 2008)。筋力をはじめとする各種運動能力は「骨格筋量」と「神経系機能」がそれぞれ関与するが、これらは必ずしも同一の成長曲線を辿るとは限らない(Scammon, 1930)。男子の場合、12歳前後に血清クレアチニンやタンパク同化ホルモン濃度が急激に増すことから(Lamberts et al, 1997)、おおよそ思春期の後期において「骨格筋量」の成長スパートが出現すると考えられている(金久ら, 1985)。一方で、「神経系機能」は思春期前〜思春期の前期において成長のピークを迎え、その後は横ばい傾向になるとの見解があるが(Scammon, 1930)、このことを示す科学的データは決定的に不足する。その理由の一つに、これまで当該分野において「神経系機能」を定量的に評価することに技術的な課題があったことが挙げられる。
【目的】そこで本研究は、近年開発された測定機器(表面筋電図)を用いることで、神経系機能の指標として対象筋における運動単位の発火特性を評価した。思春期の男子を対象に跳躍高、骨格筋量、神経系機能を評価することで、「運動能力(跳躍力)」に対する「骨格筋量」と「神経系機能」の貢献度を明らかにし、その貢献度について思春期前期・後期で比較することを本研究の目的とした。
【方法】対象は中学2年生の男子とし、CA(Chronological Age: 暦年齢)からPHVA(Peak Height Velocity Age=身長の最大増加年齢)を差し引いた値(CA-PHVA)を算出し、CA-PHVAが1未満の者を思春期前期、CA-PHVAが1以上の者を思春期後期として分類した。測定項目は垂直跳び跳躍高、骨格筋量(筋厚)、神経系機能(筋収縮時の運動単位の発火頻度)とした。
【結果】跳躍高と筋厚は思春期後期の方が高値である一方、運動単位の発火頻度は思春期前期の方が高値である傾向が示された。
【考察】本研究の結果より、跳躍力は発育発達とともに高まることが示唆され、また、跳躍力に対する各因子の貢献度について、思春期前期は神経系機能の貢献度が、思春期後期は骨格筋量の貢献度が高いものと考えられた。