表題番号:2023C-625 日付:2024/04/05
研究課題無声映画期の日本映画界における声:SPレコードの分析を通して
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 総合人文科学研究センター 助手 入倉 友紀
研究成果概要
 本研究は、無声映画期における日本の映画界と音声メディアの関わりに着目し、映画館の外における映画文化の広がりを調査するものである。日本の映画界は、無声映画の時代からすでにラジオやレコード業界と密接に関わり、活動弁士や映画俳優が参加する映画の音声ドラマを製作することで、映画に声を与えるというユニークな試みを行っていた。これは同時代の他国にはみられない、日本独自の映画実践として注目すべき現象である。
 上記を踏まえて、2023年度は主に二つの調査を行った。まず日本におけるラジオやレコードの受容史を調査した。日本における音声メディアの展開を論じた書籍は数多く存在するが、初期の映画業界との関わりは、これまで十分に論じられてきたとは言い難い。一方で映画研究においても、これらの映画に関連する音声メディアは主要な研究対象から除外されてきたという事実がある。2023年度は基礎的な文献調査を行ったため、それを踏まえて2024年度はなぜ映画業界はこの時期に、同時に発展してきたラジオやレコード業界とライバル関係ではなく、むしろ協調関係を結ぶ結果となったかを一次資料を調査して明らかにすることを目指す。
 また、2023年度は国立国会図書館が所蔵しているSPレコードの調査も行った。同館では数多くの映画に関連するSPレコードを所蔵しており、館内限定ではあるものの実際に音源を聴くこともできる。本調査では、映画関連のレコードを分類することを目指しているが、所蔵資料が多いため調査を継続している。
 これまでの研究成果としては、2024年1月に米コロンビア大学と早稲田大学が合同で開催した国際ワークショップにて、「日本の無声映画期における声:映画の音声ドラマから考える分野横断的研究の可能性」と題した口頭発表を行っている。