表題番号:2023C-615 日付:2024/04/05
研究課題ジェンダー・システム正当化の個人差の検討
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文化構想学部 助手 萩原 千晶
研究成果概要
本研究では,ジェンダー・システム正当化の高さがどのような政策を支持と関連するかについて,またそこに性別の差があるかについて,ジェンダー・システム正当化と性別の交互作用を検討した。ジェンダー・システム正当化はジェンダーにかかわる状況の現状維持を求める傾向であり,女性に比べて男性のほうが高いとされる。ただジェンダー・システム正当化は男性だけではなく女性も支持することがあり,それにより社会の差別構造を持続させる一因であると言われている。本研究では様々な人権にかかわる政策の支持が,ジェンダー・システム正当化の高さにより異なると考え,男女300名ずつ計600名 (平均年齢20.37歳,SD = 1.81) を対象とした調査を行った。数ある政策の中で,「LGBTに対する差別解消法,理解推進法」「男性の育休取得率向上 (2025年までに30%を目指す)」については交互作用が認められ,男性はジェンダー・システム正当化が高いほど,「LGBTに対する差別解消法,理解推進法」「男性の育休取得率向上 (2025年までに30%を目指す)」への支持が下がるという負の相関がみられたのに対し,女性はいずれも関連がみられなかった。現状を維持したいと考える男性にとっては,ジェンダーにかかわる政策が実現しない方が良いと考えている可能性も考えられた。本研究で尋ねた政策はジェンダーにかかわるものとそうでないものが混在しており,ジェンダーにかかわるものでも交互作用が見られなかったものもある。政策の支持にはジェンダー・システム正当化ではない他の要因がある可能性も考えられるが,人権にかかわる政策は反対することが社会的に望ましくないと考えられるため,聞き方の工夫も必要であると考えられる。