表題番号:2023C-614 日付:2024/03/27
研究課題注意制御能力が反すう思考および抑うつに及ぼす影響の検討
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文化構想学部 講師 石川 遥至
研究成果概要
本研究は、能動的に注意を制御するスキルの高さと抑うつおよび反すう思考(ネガティブな反復的思考)との関連を検討することを目的とした。生態学的妥当性の高い反すう思考の指標として、参加者が普段通りの生活を送っている最中にスマートフォンに質問項目を送信し、直近の状態を報告してもらう経験サンプリング法による測定を採用した。参加者は事前に抑うつ・注意制御スキルを測定された上で、1日4回×4日間、反すうに関する7つの項目(反すうを行った時間・思考のネガティブさ・自責的思考・不快感の原因や結果に関する思考・問題解決的思考・抽象的思考・思考の制御)について、それぞれ0-100で回答するよう求められた。調査は本学の大学生・大学院生を対象として実施され、96名から有効回答を得た。 はじめに、性別と学年の影響を統制した上で変数間の偏相関分析を行ったところ、選択的注意スキルの高さが反すうを行った時間・思考内容のネガティブさ・不快感の原因や結果に関する思考と有意な負の相関、思考の制御と有意傾向の正の相関を示した。また、注意制御の3つのスキル(選択的注意・転換的注意・分割的注意)はいずれも抑うつと有意な負の相関を示した。次に、反すうに関する7つの項目を予測変数、抑うつを従属変数としてステップワイズ法による重回帰分析を行ったところ、最終的に思考内容のネガティブさ(β = .28, p = .01)・抽象的思考(β = .29, p = .002)・思考の制御(β = -.23, p = .02)を予測変数とするモデルが得られた(R2 = .26, p < .001)。 本研究の結果より、選択的注意スキルは否定的で受動的な反すう思考の生起・持続を予防し、抑うつの悪化を防いでいる可能性が示唆された。研究成果は来年度に学会発表および学術論文として公表する予定である。