表題番号:2023C-611 日付:2025/03/25
研究課題ラオスの商品作物栽培地域における村落コミュニティの社会経済的格差に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文化構想学部 教授 箕曲 在弘
研究成果概要
本研究は、ラオス人民民主共和国のコーヒー作物栽培地域における村落コミュニティの社会経済的格差を明らかにすることを目的としている。このために、2025年3月11日から24日にかけて、ラオスのコーヒー産地におけるフィールドワークを実施した。この期間の調査は、科研費基盤研究Aの分担金による調査と並行して行われた。

調査はノンサムパン村という町の中心から10キロほど北にある人口700人ほどの村で実施した。この村は1981年から88年にかけて集団農場があった場所である。この集団農場では数十家族ほどが共同でコーヒー栽培をおこなっていたが、1988年に土地が私有化され、各世帯1.4ヘクタールの農地をもらい受けることになった。

このように1988年の時点では農地規模の面での初期条件は同じであったものの、30年以上が経過した2025年の時点では、各世帯の農地規模には大きな幅がある。

本調査では、1988年当時の住民の特定、その住民の子供世帯の特定、子供世帯の居住地の特定を行った。その後、同村内居住の場合の農地拡大状況について、各世帯を訪問し聞き取り調査を行った。

調査期間の短さから、同村全体の状況を明らかにすることはできなかったが、同村内の第5班(8つの班がある)17世帯を対象に調査を実施した。

この結果、1990年~2000年代の20年のあいだに村の周辺の原生林あるいは休閑地を伐開し、農地を少しずつ広げてきたことが分かった。2010年代にはすでに耕作可能な農地は残っておらず、この15年ほどは農地の売買によって土地集積が進んでいった。売買の理由は、兄弟の村外移住による農園の放棄や医療費などの急な現金の必要性といったものであった。

今後は他の班の情報も収集し、社会主義国の換金作物地域における土地集積のパターンについて明らかにしていきたい。