表題番号:2023C-606 日付:2024/04/04
研究課題刑法における金銭の保護の在り方
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 法学部 助手 西村 剛輝
研究成果概要
 本研究課題は、所有者の手元から離れた金銭が、刑法上如何にして保護されるのかを検討するものである。本課題を通じて、次のような問題が明らかとなった。
 第一に、民法上は金銭の占有者と所有者とが一致すると考えられているが、その理解が刑法上も妥当し得るのか、妥当するとして刑法上の例外を設けることが可能かが具体的課題として浮かび上がる。ここでは、そもそも金銭の「占有=所有」理論の根源にまで遡ってその射程を見極める必要がある。
 第二に、従来の刑法研究においては、金銭ないし金額を客体とする財産犯の成否を検討するに際して、客体の特定基準に関する議論があまり行われていないことが明らかとなった。だが、このことは、所有権に対する罪を考えるときに重大な問題を内包している。というのも、所有権の対象は何らかの形で特定されている必要があるからである。本課題の遂行にあたり、民法上の議論から示唆を得ることで、客体の特定基準に関しての一定の指針を得ることができた。これは、金銭を客体とする財産犯一般に通じる原理として構成し得るものだと考える。
 以上の研究成果は、2024年度内に紀要にて公開する予定である。