表題番号:2023C-590 日付:2024/02/29
研究課題ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が拓く銀河団とブラックホールの共進化研究の新展開
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等研究所 准教授 嶋川 里澄
(連携研究者) 東北大学 教授 児玉忠恭
(連携研究者) 国立天文台 准教授 小山佑世
(連携研究者) 国立天文台 准教授 田中賢幸
(連携研究者) 国立天文台 上級研究員 田中壱
(連携研究者) IAC Postdoc Perez-Martinez, J. M.
(連携研究者) The University of Nottingham Professor Hatch, N. A.
(連携研究者) Leiden University Professor Rottgering, H. J. A.
(連携研究者) IAC Research Staff Dannerbauer, H.
研究成果概要
当該課題は2021年末にNASAによって打ち上げられた次世代宇宙望遠鏡であるジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡にて、第一期国際共同利用提案として採択された、2023年6月に予定する近赤外観測に向けた多波長データ解析と観測準備、および実際に取得された観測データの解析を主としたものである。

観測対象はスパイダーウェッブ原始銀河団と呼ばれる、過去20年に渡って精力的に調査がなされた銀河団の祖先で、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の第一期観測として最適と呼べる有名領域である。近年、代表者を含めた研究チームが同天体の観測を国際的に牽引しており、本課題では、代表者はこの原始的銀河団でまさに成長を終えようとしている多数の巨大銀河と、内包する大質量ブラックホールに焦点を当てて、研究を行った。

本研究では、過去20年の研究遺産を総括するように、これまでの可視・近赤外観測データの解析に加えて、チャンドラX線宇宙望遠鏡やALMA望遠鏡など、X線からサブミリ波に渡る多波長データを全て集めて、包括的な研究を行なった。結果、非常に興味深いことに、これまで成長途上だと思われていた巨大銀河の半数が、すでに星形成活動を終えつつあり、これら全てにおいて活動的ブラックホールの兆候が捉えられた。これは銀河の活動の終焉と巨大ブラックホール活動が密接にリンクしていることを意味している。

本結果は2023年9月に名古屋大学で開催された日本天文学会で報告後、国際査読論文として投稿し、2024年初頭に受理、および発行された。2023年6月にはジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡データも無事取得され、現在精力的に解析にあたっている最中であり、科学的インパクトの高い成果が得られることが大いに期待される。