表題番号:2023C-584 日付:2024/03/23
研究課題非自明な背景場中での場の量子論の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等研究所 講師 山田 悠介
(連携研究者) Stanford University 名誉教授 Renata Kallosh
(連携研究者) 北海道大学 教授 小林達夫
(連携研究者) 北海道大学 学生 菊地渉太
(連携研究者) 北海道大学 学生 那須海渡
(連携研究者) 北海道大学 学生 佐久間陸
(連携研究者) 北海道大学 学生 高田翔平
(連携研究者) 早稲田大学 教授 安倍博之
(連携研究者) 早稲田大学 学生 小市明勢
研究成果概要

本研究では非自明な背景場を含む場の量子論の研究というテーマのもと、以下の成果を得た。

まず、「高次超対称性を持つ4次元超重力理論における紫外発散がない」ことを高次超対称性を持つ重力理論に隠れた対称性の観点から証明した。これは未だ完成していない重力の量子論における紫外発散問題に対して、超対称性とそれに伴う隠れた大局的対称性の役割の重要性を示す重要な結果である。この結果をまとめた論文は学術誌に掲載されている。

また、近年注目されている「モジュラー対称性」を持つ素粒子模型において、素粒子質量の決定に重要な役割を果たす複素構造モジュライ場の真空期待値を決定する機構に関する研究も行った。複素構造モジュライ場が初期宇宙において時間変化することを想定し、その時間変化に伴って生じる真空からの粒子生成現象により生成される粒子のエネルギーを考慮することで、複素構造モジュライ場は軽い粒子が現れる「拡大対称点」周辺に捕捉される可能性に注目し、数値計算シミュレーションや解析計算を通して実際にモジュライ場が補足できることを示した。また複素構造モジュライ場に対して物質場からの量子補正により生じるポテンシャルが、拡大対称点に補足されたモジュライ場の真空期待値に与える影響を解析した。量子補正が十分に大きくなる場合、現実的な素粒子質量スペクトラムを再現するために取るべき複素構造モジュライ場の真空期待値が実現されうることを示すことに成功した。これらの結果はそれぞれ論文にまとめ、学術誌への掲載に至っている。

さらに、観測されている素粒子標準理論を超弦理論の枠組みで実現する最も簡単な系として知られる「磁場を持つトーラスコンパクト化模型」における真空エネルギーに関する研究も実施した。古典的な相互作用ラグランジアンが4次元超対称性を実現するような模型において、トーラス計量に対する量子補正ポテンシャルを計算し、補正されたポテンシャルが4次元超対称性を保つ真空を持つか否かを議論した。この結果は論文にまとめ、現在学術誌で査読中である。