表題番号:2023C-581
日付:2024/04/03
研究課題構造推定アプローチによる生産関数の推定と環境政策評価への応用
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 高等研究所 | 講師 | 阿部 達也 |
(連携研究者) | 早稲田大学政治経済学部 | 准教授 | 遠山 祐太 |
(連携研究者) | Department of Economics, University of Exeter Business School | Lecturer | Arlan Brucal |
- 研究成果概要
- 排出量取引や炭素税を気候変動政策として導入する国・地域が増加している.これらのカーボンプライシングが企業活動へ及ぼす影響を把握し,その炭素削減効果を理解することは重要である.本研究課題の目標は,インドネシアの製造業における生産パネルデータを使用して各企業が有する炭素の限界削減費用を推定することである.企業は炭素の限界削減費用に基づいて,どの程度自ら削減を行い,市場からいくら排出権を購入するかについて意思決定を行う.したがって,各排出主体が直面する炭素の限界削減費用を把握することは,規制主体が環境政策の制度設計をする際に重要な役割を果たす.本研究課題の新規性は,企業が行う生産に関する意思決定を記述したモデルに生産技術やエネルギー効率性などの企業間異質性を新たに導入して,各企業が私的情報として有する炭素の削減費用を推定する点にある.データでは観測することができない生産技術やエネルギー効率性などの企業間異質性を考慮に入れた分析を行うためには,企業単位の生産に関する詳細なデータと経済理論に基づいたモデルが必要になる.そこで,インドネシアの製造業を対象にした年次調査を利用して企業単位の長期間にわたるパネルデータを構築し,構造推定アプローチによって各企業が行う生産に関する意思決定の構造パラメータを推定した.このパラメータの推定値を使うことによって,企業ごとに異なるエネルギー効率性などの経時変化を追うことができる.本研究費の受給期間における主要な成果は,本研究課題の根幹となる生産関数を推定する作業を完了させることができたことである.これによって,本研究を学術論文としてまとめるまでの見通しを立てることができた.今後は,この推定されたモデルをもとに,各企業が有する炭素の削減費用を推定する予定である.